賄賂には誓紙を忘るの意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

賄賂には誓紙を忘るの読み方

わいろにはせいしをわする

賄賂には誓紙を忘るの意味

このことわざは、賄賂の甘い誘惑に慣れてしまうと、本来守るべき約束や契約の大切さを忘れてしまうという意味です。

賄賂を使えば面倒な手続きを省略でき、困難な交渉も簡単に解決できてしまいます。しかし、そんな楽な方法に頼り続けていると、正当な約束や契約を結んで物事を進めることの重要性を見失ってしまうのです。賄賂は一時的な解決策に過ぎず、長期的な信頼関係を築くことはできません。

このことわざが使われるのは、不正な手段に頼ることの危険性を警告する場面です。目先の利益や便利さに惑わされて、本来の正しい道筋を忘れてしまう人への戒めとして用いられます。現代でも、正当な努力や約束を軽視し、裏取引や不正な手段で物事を解決しようとする人に対して、この教訓は十分に通用するでしょう。

由来・語源

このことわざの由来は、江戸時代の商取引や役人との関係において生まれたと考えられています。「賄賂」とは金品を贈って便宜を図ってもらうこと、「誓紙」とは約束や契約を記した文書のことですね。

当時の商人や町人にとって、役人との関係は商売の成否を左右する重要な要素でした。しかし、一度賄賂という甘い蜜を味わってしまうと、人は本来守るべき約束や契約の重要性を忘れがちになってしまうのです。

江戸時代の商取引では、信用が何よりも大切でした。商人同士の約束は口約束であっても重く、重要な取引では誓紙を交わすことが一般的でした。ところが、賄賂によって物事を解決する味を覚えてしまうと、正当な手続きや約束を軽視するようになってしまう。これは当時の商人社会では深刻な問題だったのでしょう。

このことわざは、そうした時代背景の中で、賄賂の持つ危険性を戒める教訓として生まれたと推測されます。正直な商売と信用を重んじる江戸商人の価値観が、この言葉に込められているのかもしれませんね。

使用例

  • あの政治家は賄賂には誓紙を忘るで、もう正当な政治手続きなんて眼中にないようだ
  • 彼は便宜を図ってもらうことばかり考えて、賄賂には誓紙を忘るの典型例になってしまった

現代的解釈

現代社会において、このことわざは新たな意味を持つようになっています。賄賂という直接的な金品のやり取りだけでなく、様々な「楽な抜け道」に依存してしまう現象として理解できるでしょう。

例えば、SNSでの「いいね」やフォロワー購入、レビューの操作、コネクションを使った就職活動など、正当な努力を避けて結果だけを求める行為が蔓延しています。これらは現代版の「賄賂」と言えるかもしれません。一度こうした手段に頼ってしまうと、本来の実力を磨くことや、正当な手続きを踏むことの価値を忘れがちになります。

ビジネスの世界でも、短期的な利益を追求するあまり、長期的な信頼関係や契約の重要性を軽視する企業が問題となっています。コンプライアンス違反や不正会計などは、まさに「賄賂には誓紙を忘る」の現代的な表れと言えるでしょう。

しかし、情報化社会では不正行為が発覚しやすくなり、一度失った信用を回復することは以前よりも困難になっています。このことわざの教訓は、むしろ現代においてより重要性を増していると言えるのではないでしょうか。

AIが聞いたら

賄賂を受け取る瞬間、人の脳内では「自分を正当化する物語」が猛スピードで作られます。「これは感謝の気持ちだ」「みんなやっている」「一回だけなら」。心理学では、これを「認知的不協和の解消」と呼びます。つまり、悪いことをしている自分を受け入れられないため、無意識に理由をでっち上げるのです。

現代の「コンプライアンス疲れ」も同じメカニズムです。規則が多すぎると、人は「重要でない規則なら破ってもいい」と線引きを始めます。たとえば、残業時間の過少申告から始まって、やがて経費の水増しへとエスカレートする。最初の小さな違反が「慣れ」を生み、道徳的な感覚を麻痺させるのです。

興味深いのは、賄賂も規則違反も「段階的な悪化」をたどることです。いきなり大金を受け取る人はいません。まず小さな贈り物から始まり、徐々に金額が上がります。この「茹でガエル現象」により、当人は自分の変化に気づかないまま、気がつけば誓紙(誓約書)の存在すら忘れてしまう。

江戸時代も現代も、人間の「都合の良い忘却」という心理は変わらないのです。

現代人に教えること

このことわざが現代の私たちに教えてくれるのは、「正道を歩む習慣の大切さ」です。便利な時代だからこそ、あなたも日々様々な「楽な選択肢」に出会うことでしょう。でも、そんな時こそ立ち止まって考えてみてください。

大切なのは、小さな約束から誠実に守り続けることです。友人との待ち合わせ時間、仕事の締切、家族への約束。これらを軽視せず、一つひとつ丁寧に守っていくことで、あなたの中に「信頼という財産」が積み重なっていきます。

現代社会では、短期的な成果を求められることが多いかもしれません。しかし、本当に価値のある人間関係や仕事は、時間をかけて築かれる信頼の上に成り立っています。SNSの「いいね」は買えても、本当の信頼は買うことができないのです。

あなたが今日交わす小さな約束も、明日結ぶ大きな契約も、すべて同じように大切にしてください。正しい道を歩み続けることで、あなた自身が信頼される人になり、結果的により大きな成功と幸せを手にすることができるはずです。

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