内広がりの外すぼりの意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

内広がりの外すぼりの読み方

うちひろがりのそとすぼり

内広がりの外すぼりの意味

「内広がりの外すぼり」とは、内輪では大きなことを言ったり威勢よく振る舞ったりするのに、外部の人や目上の人の前では急に小さくなってしまう人を表すことわざです。

家族や親しい友人の前では偉そうに語り、自信満々な態度を見せるのに、いざ外の世界に出ると途端に萎縮してしまう。そんな人間の二面性を、器の形に例えて表現しています。使用場面としては、身内では強気なのに外では弱気な人を批判的に評する時や、自分自身の態度を反省する時に用いられます。

このことわざが使われる理由は、見栄や虚勢の滑稽さを指摘するためです。本当の強さや自信は、相手や場所によって変わるものではありません。内と外で態度が極端に変わる人は、結局のところ本物の実力や自信を持っていないことを露呈しているのです。現代でも、SNSでは強気な発言をするのに実際に会うと大人しい人など、このことわざが当てはまる場面は数多く存在します。

由来・語源

このことわざの由来について、明確な文献上の記録は残されていないようですが、言葉の構造から興味深い考察ができます。

「内広がり」と「外すぼり」という対照的な表現を組み合わせたこの言葉は、おそらく江戸時代の庶民の観察眼から生まれたものと考えられています。当時の町人社会では、人々の日常的な振る舞いを鋭く観察し、それを簡潔な言葉で表現する文化が栄えていました。

「広がり」と「すぼり」という視覚的な表現に注目すると、これは器や建物の形状を思わせます。内側は広々としているのに、外に向かって狭くなっていく形です。この物理的なイメージを人間の態度に当てはめたところに、このことわざの巧みさがあります。

身内や仲間内では大きな態度を取り、威勢の良いことを言う人が、外部の人間や権威ある相手の前では急に小さくなってしまう。そんな人間の二面性を、たった一言で言い表しているのです。江戸の人々は、こうした人間観察を通じて、見栄や虚勢の滑稽さを笑い飛ばす知恵を持っていたのでしょう。言葉の響きも軽妙で、批判しながらもどこかユーモラスな雰囲気を醸し出しています。

使用例

  • 彼は家では偉そうなことばかり言っているけど、会社では内広がりの外すぼりで上司の前では何も言えないらしい
  • 内広がりの外すぼりにならないよう、どんな相手の前でも自分の意見をしっかり言えるようになりたい

普遍的知恵

「内広がりの外すぼり」ということわざは、人間の持つ根源的な弱さと、社会的な自己との葛藤を鋭く突いています。

なぜ人は内と外で態度を変えてしまうのでしょうか。それは、安全な場所では自分を大きく見せたいという欲求と、危険を避けたいという本能が同時に働くからです。身内という安全地帯では、自分の理想像を演じることができます。そこでは失敗しても許され、批判されても深刻な結果にはなりません。だからこそ、人は内輪では大胆になれるのです。

しかし外の世界は違います。そこには本当の評価があり、失敗には代償が伴います。だから人は慎重になり、時には萎縮してしまいます。この落差が大きければ大きいほど、その人の内面には不安と虚勢が渦巻いているのです。

このことわざが長く語り継がれてきたのは、人間のこうした普遍的な弱さを、誰もが心のどこかで自覚しているからでしょう。完璧に一貫した態度を保てる人など、ほとんどいません。だからこそ先人たちは、この人間的な弱さを笑い飛ばしながらも、同時に戒めとして伝えてきたのです。内と外の落差を自覚することが、真の成長への第一歩だと知っていたからです。

AIが聞いたら

器の口が狭くて中が広い形は、実は流体力学的に非常に興味深い構造をしています。水を注ぐとき、狭い口から入った水は中の広い空間に到達する過程で流速が急激に低下します。ベルヌーイの定理によれば、流体の速度が遅くなると圧力が上がるため、器の内部では水が安定した高圧状態になります。つまり、外から見ると小さく見える器が、中では水を落ち着かせる構造になっているのです。

これは飛行機の翼とは逆の原理です。翼の上面は流速が速く圧力が低いから機体が浮きますが、内広がりの器は流速を落として圧力を高め、液体を安定させます。たとえば徳利を思い浮かべてください。注ぎ口は細く、胴体は膨らんでいます。この形状のおかげで、中のお酒は外気との接触面積が小さく、温度変化や蒸発を抑えられます。さらに注ぐときも、狭い口で流量をコントロールしやすくなります。

竜巻が細くなった先端で最も破壊力が高いのは、そこで流速が最大になり圧力が最低になるからです。内広がりの器はその真逆で、エネルギーを分散させて穏やかにする設計です。見た目の小ささが中身の豊かさを守る、物理法則に裏打ちされた形なのです。

現代人に教えること

このことわざが現代人に教えてくれるのは、一貫性のある自分を持つことの大切さです。SNSの普及により、私たちは以前よりも多くの「顔」を使い分けるようになりました。オンラインでの自分、職場での自分、家庭での自分。それぞれの場面で異なる態度を取ることは、ある程度は自然なことです。

しかし、その違いがあまりに極端になっていないか、時には立ち止まって考えてみる必要があります。身内では威勢が良いのに、いざという時に何も言えない。それは結局、自分自身を苦しめることになるのです。

大切なのは、どんな場面でも譲れない自分の核を持つことです。それは完璧である必要はありません。むしろ、自分の弱さも含めて受け入れ、それでも大切にしたい価値観を持つことです。

内でも外でも、少しずつでいいから、本当の自分の声を出してみましょう。最初は小さな一歩でかまいません。その積み重ねが、やがてあなたを「内広がりの外すぼり」から解放し、どこにいても自分らしくいられる強さを与えてくれるはずです。

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