徳に順う者は昌え、徳に逆らう者は亡ぶの意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

徳に順う者は昌え、徳に逆らう者は亡ぶの読み方

とくにしたがうものはさかえ、とくにさからうものはほろぶ

徳に順う者は昌え、徳に逆らう者は亡ぶの意味

このことわざは、道徳や正しい行いに従って生きる者は繁栄し、道徳に背いて生きる者は滅びるという、人生における因果応報の原則を示しています。

ここでいう「徳」とは、単なる善行ではなく、人として守るべき道理や正義、誠実さ、思いやりといった内面的な品性全体を指します。徳に順うとは、目先の利益や欲望に流されず、正しいと信じる道を歩むことです。その結果として、個人の成功だけでなく、家族の幸福や事業の発展など、長期的な繁栄がもたらされるという教えです。

反対に、徳に逆らうとは、不正な手段で利益を得たり、人を欺いたり、道義に反する行動を取ることを意味します。一時的には成功したように見えても、最終的には信頼を失い、破滅に至るという警告が込められています。

現代では、企業倫理や社会的責任が問われる場面で、この教えの重要性が再認識されています。短期的な利益追求ではなく、誠実で道徳的な経営や生き方こそが、持続可能な成功につながるという普遍的な真理を表現しています。

由来・語源

このことわざは、中国の古典思想、特に儒教の影響を強く受けた言葉だと考えられています。「徳」という概念は、古代中国において政治や社会の根幹をなす重要な思想でした。

儒教では、為政者が徳を備えることで天命を受け、国を治める資格を得るとされていました。逆に、徳を失った君主は天命を失い、王朝が滅びるという「易姓革命」の思想があります。この考え方は日本にも伝わり、武士の時代から江戸時代にかけて、為政者の心得として広く受け入れられていきました。

「昌え」という言葉は「栄える」「盛んになる」という意味で、個人だけでなく家や国の繁栄も含む広い概念です。一方の「亡ぶ」は単なる死ではなく、存在そのものが消滅する、家系が途絶えるといった深刻な意味を持っています。

この対句的な表現は、中国の古典に多く見られる修辞法で、善悪の結果を鮮明に対比させることで、教訓としての印象を強めています。日本では江戸時代の教訓書や武士の心得を説く書物に登場し、道徳的な生き方の重要性を説く際に用いられてきました。明確な初出は特定されていませんが、儒教思想が日本社会に深く浸透する過程で定着した言葉だと推測されます。

使用例

  • あの経営者は常に誠実な商売を心がけてきたから、徳に順う者は昌え、徳に逆らう者は亡ぶというとおり、今も会社は発展し続けているね
  • 不正な手段で一時的に成功しても、徳に順う者は昌え、徳に逆らう者は亡ぶという言葉どおり、いずれ破綻するものだよ

普遍的知恵

このことわざが何百年も語り継がれてきた理由は、人間社会における深い真理を捉えているからです。それは、道徳と繁栄の関係が、単なる理想論ではなく、実際の人間関係や社会の仕組みに根ざした現実だということです。

人は一人では生きていけません。どんな成功も、周囲の人々の信頼と協力があってこそ成り立ちます。道徳的に正しく生きる人は、自然と周りから信頼され、支援を得られます。困ったときには助けてもらえ、チャンスが訪れたときには推薦してもらえる。これは計算ずくでできることではなく、日々の誠実な行動の積み重ねが生み出す、目に見えない財産なのです。

逆に、不正や欺瞞で一時的な利益を得ても、それは砂上の楼閣です。人々の信頼を失えば、どんなに才能があっても孤立し、最終的には支えを失って崩れ去ります。歴史を見れば、権力者も企業も、道徳を失った瞬間から衰退が始まっています。

この教えが示すのは、人間社会には自浄作用があるということです。短期的には不正が得をするように見えても、長期的には必ず淘汰される。それは罰が下るというより、信頼という社会の基盤を失うことで、自然と立ち行かなくなるのです。先人たちは、この社会の本質的なメカニズムを見抜いていました。だからこそ、時代が変わっても、この言葉は私たちに語りかけ続けるのです。

AIが聞いたら

徳のある人が繁栄する仕組みは、インターネットやSNSと同じ数学的法則で説明できる。ネットワーク科学では「優先的選択」という現象がある。これは、すでに多くのつながりを持つノードに新しいつながりが集まりやすいという法則だ。たとえばYouTubeで登録者が多いチャンネルほど、さらに新規登録者が増えやすい。人間関係でも同じことが起きる。信頼できる人のもとには、その評判を聞いた人が次々と集まり、協力者ネットワークが指数関数的に拡大する。100人の協力者がいる人は、次の1年で200人になるが、10人しかいない人は15人にしかならない。この差は時間とともに圧倒的になる。

逆に徳に逆らう人は、短期的には裏切りで利益を得ても、ネットワークから標的型攻撃を受けたような状態になる。ネットワーク研究では、ランダムなノードが消えてもシステムは安定だが、ハブ(中心的なノード)が狙われると全体が崩壊することが分かっている。裏切り者は周囲から意図的に切断される。つまり「標的型の排除」を受ける。すると情報も資源も入らなくなり、まるで酸素を断たれたように機能停止する。徳は単なる道徳ではなく、ネットワーク上で生き残るための数学的に最適な戦略なのだ。

現代人に教えること

このことわざが現代を生きる私たちに教えてくれるのは、誠実さこそが最強の戦略だということです。SNSで情報が瞬時に拡散する今の時代、不正や不誠実な行動はすぐに明るみに出ます。一方で、地道に正しいことを続ける人の評価は、確実に積み上がっていきます。

あなたが今、正直に生きることで損をしているように感じることがあるかもしれません。ずるい人が得をしているように見えることもあるでしょう。でも、それは一時的な錯覚です。人生は長い旅です。その道のりで本当に大切なのは、鏡に映る自分に誇りを持てるかどうかです。

道徳的に生きることは、他人のためだけではありません。それはあなた自身の心の平安と、長期的な幸福のための投資なのです。嘘をつかない、約束を守る、人を大切にする。こうした当たり前のことを積み重ねることで、あなたの周りには自然と信頼できる人が集まり、困ったときには助けてくれる仲間ができます。

今日から、小さなことでいいのです。正直に生きる選択を、一つずつ重ねていきましょう。その積み重ねが、あなたの人生を豊かにし、本当の意味での成功へと導いてくれるはずです。

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