小人は始め有りて終わり無しの意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

小人は始め有りて終わり無しの読み方

しょうじんははじめありておわりなし

小人は始め有りて終わり無しの意味

このことわざは、人格が未熟な人物は物事を始めることはできても、最後まで続けて完成させることができないという意味です。新しいことに取り組む最初の段階では誰もが意欲に満ちていますが、困難に直面したり、飽きてしまったり、より魅力的な別のことに目移りしたりして、途中で投げ出してしまう人がいます。このことわざは、そうした継続力や忍耐力に欠ける人物の特徴を指摘しています。

使われる場面としては、何かを始めてもすぐに諦めてしまう人を戒める時や、最後までやり遂げることの大切さを説く時などです。現代でも、新しい習い事や勉強、ダイエットなど、始めたものの三日坊主で終わってしまう経験は誰にでもあるでしょう。このことわざは、真に立派な人物とは、始めるだけでなく最後まで責任を持ってやり遂げる人であるという、人間の本質的な価値観を示しているのです。

由来・語源

このことわざは、中国の古典『詩経』の一節に由来すると考えられています。『詩経』は紀元前11世紀から紀元前6世紀頃の詩を集めた中国最古の詩集で、その中の「大雅」という部分に「靡不有初、鮮克有終」という言葉が見られます。これは「初め有らざるは靡し、克く終わり有ること鮮なし」と読み、「始めることは誰でもできるが、最後まで成し遂げられる人は少ない」という意味です。

この言葉における「小人」とは、単に身分が低い人という意味ではなく、儒教的な価値観における「徳の低い人物」「人格が未熟な人」を指しています。対義語は「君子」で、こちらは徳が高く立派な人物を意味します。つまり、人間の品格や精神性の違いを表現した言葉なのです。

日本には儒教思想とともに伝わり、江戸時代には武士の教養として広く知られるようになりました。物事を最後まで成し遂げる力こそが人間の真価を示すという考え方は、日本の精神文化にも深く根付いていったと言えるでしょう。始めることは容易でも、継続し完遂することの困難さを説いた、時代を超えた教訓なのです。

使用例

  • 彼はまた新しい資格の勉強を始めたらしいが、小人は始め有りて終わり無しで、どうせ続かないだろう
  • あの人は小人は始め有りて終わり無しの典型で、プロジェクトをいくつも立ち上げるが完成したものは一つもない

普遍的知恵

このことわざが何百年も語り継がれてきた理由は、人間の本質的な弱さと向き合っているからです。始めることは誰にでもできます。新しいことへの期待や希望に胸を膨らませ、最初の一歩を踏み出すのは、むしろ楽しいことでさえあります。しかし、時間が経つにつれて、初めの情熱は冷め、困難が立ちはだかり、成果が見えにくくなります。そこで多くの人が挫折するのです。

人間には「新しいもの好き」という性質があります。新鮮な刺激を求め、変化を楽しむ心は、生存本能として備わっているとも言えるでしょう。しかし同時に、一つのことを地道に続けることへの飽きや、単調さへの抵抗感も持ち合わせています。この二つの相反する性質の間で、人は常に揺れ動いているのです。

古の人々は、この人間の弱さを見抜いていました。そして、真に価値があるのは始めることではなく、終わらせることだと喝破したのです。完成させること、やり遂げること、そこにこそ人間の真価が現れる。この洞察は、人間が人間である限り、決して色褪せることのない普遍的な真理なのです。

AIが聞いたら

物理学の世界では、放っておくとすべてのものは無秩序に向かうという法則があります。これがエントロピー増大の法則です。たとえば、きれいに片付けた部屋は何もしなければ自然と散らかっていきますが、逆に勝手に片付くことは絶対にありません。

このことわざの「小人」の行動パターンは、まさにこの物理法則に従っています。最初にやる気を出して物事を始めるには、外部からエネルギーを注ぎ込む必要があります。つまり、意志の力で自分を奮い立たせ、低エントロピー状態(秩序ある状態)を作り出すわけです。しかし、その後に継続的にエネルギーを投入し続けなければ、システムは自然と高エントロピー状態(無秩序な状態)へ戻っていきます。

興味深いのは、継続できる人とできない人の差が、エネルギー投入の持続性にあるという点です。優れた人は習慣化という仕組みで、少ないエネルギーで秩序を維持する方法を見つけています。これは冷蔵庫が最初は大きな電力を使うけれど、冷えた状態を保つには少ない電力で済むのと似ています。

つまり「終わり無し」という状態は、意志の弱さというより、エントロピー増大という宇宙の基本法則に抗えていないだけなのです。人間の怠惰さは、ある意味で物理的に自然な状態と言えます。

現代人に教えること

このことわざが現代のあなたに教えてくれるのは、始めることよりも続けることに真の価値があるということです。情報があふれ、選択肢が無限にある現代社会では、新しいことを始める誘惑が常にあります。しかし、本当に大切なのは、一つのことを最後までやり遂げる力を育てることなのです。

完璧を目指す必要はありません。大切なのは、たとえ小さな一歩でも、毎日続けることです。途中で挫折しそうになったら、このことわざを思い出してください。あなたが今、続けている努力こそが、あなたを「小人」ではなく「君子」へと成長させているのです。

現代社会で成功している人たちの多くは、特別な才能があったわけではありません。ただ、他の人が諦めた後も、黙々と続けた人たちなのです。あなたにも、その力は必ずあります。今日という日を、昨日始めたことを続ける日にしてください。その積み重ねが、やがて大きな達成となって、あなたの人生を輝かせるのですから。

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