三五の十八の意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

三五の十八の読み方

さんごのじゅうはち

三五の十八の意味

「三五の十八」とは、3×5=15という簡単な計算を18と間違えてしまうことから、計算や見込みを誤ることを意味します。

このことわざは、単なる算数の間違いを指すだけではありません。物事の予測や計画を立てる際に、基本的なところで判断を誤ってしまう状況全般を表現しています。商売での収支計算、事業の見通し、人員配置の計画など、本来なら間違えるはずのない基礎的な部分で失敗してしまうことへの戒めです。

使用場面としては、誰かが明らかな計算ミスや見込み違いをしたときに、「それは三五の十八だよ」と指摘する形で用いられます。また、自分自身の失敗を反省する際にも使われます。

現代でも、プロジェクトの予算見積もりを大きく外したり、基本的な前提条件を見誤ったりする場面は少なくありません。このことわざは、どんなに複雑な計画でも、基礎となる計算や見込みが間違っていれば全てが狂ってしまうという、普遍的な教訓を伝えているのです。

由来・語源

このことわざの由来については、明確な文献上の初出は定かではありませんが、言葉の構造から興味深い考察ができます。

「三五」とは3と5のこと、そしてその積は当然15になるはずです。しかし「十八」と答えてしまう。この単純な計算間違いが、なぜことわざとして定着したのでしょうか。

おそらく江戸時代の商人文化の中で生まれた表現だと考えられています。当時、そろばんを使った計算は商売の基本でした。3×5という簡単な計算を間違えることは、商人として致命的なミスを意味します。しかも15を18と間違えるのは、単なる計算ミスではなく、3も足してしまったような大きな誤りです。

興味深いのは、この間違いが「13」や「14」ではなく、「18」という具体的な数字で表現されている点です。これは実際によくある間違いのパターンを示しているのかもしれません。あるいは、語呂の良さから「十八」が選ばれた可能性もあります。

商売の現場では、計算違いは信用を失う原因となります。そうした実務の世界から、見込み違いや計算違い全般を戒める表現として、このことわざが広まっていったと推測されます。数字を使った具体的な表現だからこそ、誰にでも分かりやすく、記憶に残りやすかったのでしょう。

使用例

  • 予算の見積もりが三五の十八で、プロジェクトが大赤字になってしまった
  • 彼の事業計画は三五の十八だから、最初から成功するはずがなかった

普遍的知恵

「三五の十八」ということわざは、人間の認識の脆弱性という普遍的な真理を突いています。

私たちは自分の判断力を過信しがちです。特に基礎的なことほど、「これくらいは間違えるはずがない」と思い込んでしまいます。しかし実際には、最も単純な計算や見込みこそ、注意を怠りやすいのです。3×5という誰でも解ける問題だからこそ、確認を怠り、18という大きく外れた答えを出してしまう。これは人間の心理の本質を表しています。

このことわざが長く語り継がれてきた理由は、失敗の多くが複雑な問題ではなく、基本的な部分の見落としから生まれるという事実を、先人たちが経験から学んでいたからでしょう。高度な技術や深い知識が必要な場面では、人は慎重になります。しかし「当たり前」と思える部分では、注意力が散漫になってしまうのです。

さらに深く考えると、このことわざは人間の傲慢さへの警告でもあります。「こんな簡単なこと」と軽視する心が、重大な過ちを招きます。謙虚さを失い、基本を疎かにする姿勢が、どれほど危険かを教えているのです。

どんなに経験を積んでも、どんなに知識を得ても、基本を大切にする姿勢を忘れてはならない。この変わらぬ真理を、このことわざは数字という明快な形で伝え続けているのです。

AIが聞いたら

人間の作業記憶は同時に3から5個の情報しか保持できないという限界があります。この制約が九九の習得に興味深い影響を与えています。

「二二が四」や「九九が八十一」のような端の九九は間違えにくいのに、なぜ「三五十五」を「三五十八」と間違えるのか。これは記憶の構造に理由があります。端の九九は「かたまり(チャンク)」として脳に定着しやすいのです。つまり「ににんがし」という一つの音のかたまりとして記憶されます。ところが「三五」「三八」「四六」「六八」といった中間の九九は、似た数字が密集しているため、複数のチャンクが互いに干渉し合います。

具体的に見てみましょう。三の段を思い出すとき、脳は「三三九、三四十二、三五?、三六十八、三七二十一、三八?」という複数の情報を同時に処理しようとします。このとき作業記憶の容量を超えてしまい、近くにある「十八」という数字が混入してしまうのです。

さらに興味深いのは、間違える数字にもパターンがあることです。「三五」を間違えるとき、人は「十三」や「二十」とは言いません。必ず近隣の九九の答えである「十八」「十二」など、作業記憶上で近接している数字と混同します。これは脳が情報を空間的なネットワークとして保存している証拠なのです。

現代人に教えること

「三五の十八」が現代のあなたに教えてくれるのは、基本を大切にすることの重要性です。

私たちは日々、複雑な判断を迫られています。仕事でも人間関係でも、難しい問題に直面することは少なくありません。そんなとき、つい高度な解決策や斬新なアイデアばかりを求めてしまいます。しかし本当に大切なのは、基礎となる部分をしっかり押さえることなのです。

現代社会では、スピードが重視されます。素早い判断、迅速な行動が求められる中で、「当たり前」のことを確認する時間が惜しく感じられるかもしれません。でも、その「当たり前」を疎かにしたとき、取り返しのつかない失敗が生まれます。

このことわざは、あなたに立ち止まる勇気を与えてくれます。急いでいるときこそ、基本に戻る。自信があるときこそ、もう一度確認する。そうした謙虚な姿勢が、結果的には最も確実で、最も早い成功への道となるのです。

完璧な人間などいません。誰もが「三五の十八」をしてしまう可能性を持っています。だからこそ、基本を大切にし、確認を怠らない習慣を身につけることが、あなたの人生を守る盾となるのです。

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