上り坂あれば下り坂ありの意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

上り坂あれば下り坂ありの読み方

のぼりざかあればくだりざかあり

上り坂あれば下り坂ありの意味

このことわざは、人生には良い時期と悪い時期が交互に訪れるという真理を表しています。今が順調で物事がうまくいっている時期であっても、いずれは困難な時期が来る可能性があり、逆に今が苦しい時期であっても、必ず良い時期が巡ってくるという意味です。

使用場面としては、好調な時に調子に乗りすぎている人への戒めとして、あるいは逆境にある人を励ます言葉として用いられます。成功して有頂天になっている人に「上り坂あれば下り坂ありだから、謙虚でいなさい」と忠告したり、失敗して落ち込んでいる人に「上り坂あれば下り坂あり、今は辛くてもまた良い時が来るよ」と慰めたりするのです。

現代でも、人生の浮き沈みを冷静に受け止めるための知恵として理解されています。永遠に続く幸運も不運もないという現実を、自然な変化として捉える視点を与えてくれることわざです。

由来・語源

このことわざの由来について、明確な文献上の記録は残されていないようですが、言葉の構成から興味深い考察ができます。

「上り坂」と「下り坂」という対照的な言葉を組み合わせたこの表現は、日本人が古くから持っていた自然観と深く結びついていると考えられています。山が多い日本では、坂道は日常生活に欠かせない存在でした。人々は毎日のように坂を上り、また下りながら暮らしていたのです。

坂を上る時は息が切れ、足に力を入れなければなりません。一方、下る時は楽に感じられますが、油断すると転んでしまう危険もあります。この身体的な経験が、人生の浮き沈みという抽象的な概念と重なり合ったのでしょう。

興味深いのは、このことわざが単に「良い時と悪い時がある」と言うのではなく、「上り坂があれば下り坂がある」という必然性を示している点です。上りがあれば必ず下りがあるという、山道の物理的な真実をそのまま人生に当てはめています。

仏教思想の「諸行無常」、つまりすべてのものは変化し続けるという考え方も、このことわざの背景にあると推測されます。江戸時代の庶民の間で広まったと考えられており、人生の変化を自然の摂理として受け入れる日本人の知恵が凝縮された表現なのです。

豆知識

このことわざには面白い特徴があります。実は「上り坂」と「下り坂」は、同じ一つの坂を反対側から見ているだけなのです。ある人にとっての上り坂は、反対側から来る人にとっては下り坂。つまり、見る方向によって上りにも下りにもなるという、視点の相対性を含んでいます。これは人生の良し悪しも、見方次第で変わるという深い示唆を含んでいるのかもしれません。

また、坂道には必ず頂上があります。上り続ければいずれ頂点に達し、そこからは下るしかない。逆に下り続ければいずれ谷底に達し、そこからは上るしかない。この物理的な必然性が、人生の循環性を見事に表現しているのです。

使用例

  • 会社が急成長しているけど、上り坂あれば下り坂ありだから油断は禁物だよ
  • 今は受験勉強が辛いけど、上り坂あれば下り坂ありって言うし、きっと楽になる時が来るはず

普遍的知恵

このことわざが長く語り継がれてきた理由は、人間が本能的に「永続性」を求める生き物だからです。私たちは幸せな時には「この状態がずっと続けばいいのに」と願い、苦しい時には「この苦しみが永遠に続くのではないか」と恐れます。しかし現実の人生は、決してそのような静止状態にはありません。

人間の心理には「現在バイアス」という傾向があります。今の状態が未来も続くと錯覚してしまうのです。好調な時は自分の能力を過信し、不調な時は希望を失ってしまう。このことわざは、そんな人間の認知の歪みを正してくれる知恵なのです。

興味深いのは、このことわざが単なる慰めでも警告でもなく、中立的な事実として人生の変化を述べている点です。良い時も悪い時も、どちらも人生の一部として等しく受け入れるべきだという、深い達観が込められています。

先人たちは、変化こそが人生の本質であることを見抜いていました。川の流れが常に動いているように、人生も常に変化し続ける。その変化を恐れるのではなく、自然な摂理として受け入れる。そこに真の心の平安があると、このことわざは教えてくれているのです。変化を敵とせず、友とする。それが人生を生き抜く知恵なのでしょう。

AIが聞いたら

坂道を歩く人を真上から見ると、ただ「A地点からB地点へ移動している」という事実しか見えない。上っているのか下っているのかは、その人がどちらを向いているかで決まる。つまり、地形そのものには「上り」も「下り」もなく、ただ高低差があるだけだ。

これは位相幾何学で扱う「視点依存性」の典型例になる。たとえば、あなたが山の頂上に立っているとする。東京から来た人にとってはそこまでが上り坂、大阪から来た人にとっては同じ道が下り坂だ。同じ斜面が、進行方向によって正反対の意味を持つ。

人生の出来事も同じ構造を持っている。会社の倒産は本人にとって下り坂だが、その会社に就職しようとしていた人から見れば「危機を回避できた上り坂」かもしれない。恋人との別れも、5年後に振り返れば「次の出会いへの上り坂の始まり」だったと気づくことがある。

さらに興味深いのは、上り坂と下り坂は時間軸でも反転する点だ。今日の成功(上り坂)が慢心を生んで明日の失敗(下り坂)の原因になり、今日の失敗が教訓となって明日の成功を作る。つまり、困難と幸運は別々の出来事ではなく、連続した一つの曲線上にある同一の現象だ。観測する角度と時点を変えれば、どちらにも見える。このことわざは、そんな人生の幾何学的真実を直感的に言い当てている。

現代人に教えること

このことわざが現代人に教えてくれるのは、感情の波に振り回されない生き方です。SNSで他人の成功を見て焦ったり、一時的な失敗で自分を責めすぎたりしていませんか。人生は長距離走です。今この瞬間の状態が、あなたのすべてを決めるわけではありません。

具体的には、好調な時こそ謙虚さを忘れず、次に来るかもしれない困難に備えて準備をしておくことが大切です。貯金をする、人間関係を大切にする、スキルを磨く。これらは下り坂に備えた「心の保険」になります。

そして不調な時は、今の状態が永遠ではないことを思い出してください。あなたが今経験している困難は、次の上り坂への準備期間なのです。焦らず、腐らず、今できることを一つずつ積み重ねていけば、必ず状況は変わります。

大切なのは、どちらの時期も人生の一部として受け入れる柔軟さです。上り坂で傲慢にならず、下り坂で絶望しない。その平常心こそが、変化の激しい現代社会を生き抜く最大の武器になるのです。

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