逃げ逃げ天下を取る家康の意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

逃げ逃げ天下を取る家康の読み方

にげにげてんかをとるいえやす

逃げ逃げ天下を取る家康の意味

このことわざは、一時的な撤退や忍耐が、最終的に大きな成功につながることを表しています。

目先の勝負にこだわって無謀な戦いを続けるよりも、時には身を引き、力を蓄え、好機を待つことの重要性を教えています。真の勝利者とは、プライドや面子にとらわれず、長期的な視野で物事を判断できる人だということです。このことわざが使われるのは、困難な状況に直面した人に対して「今は耐える時期だが、必ずチャンスは来る」と励ます場面や、短期的な成果を求めがちな人に対して「焦らず着実に進むことの大切さ」を伝える時です。現代でも、ビジネスや人間関係において、無理な勝負を避け、適切なタイミングを見極めることの価値は変わりません。

由来・語源

このことわざは、江戸時代から語り継がれてきた徳川家康の生涯を表現した言葉です。家康の人生を振り返ると、確かに数々の「逃げ」とも見える撤退や忍耐の場面がありました。

若き日の家康は、今川家の人質として過ごし、その後も武田信玄との三方ヶ原の戦いでは大敗を喫し、命からがら浜松城へと逃げ帰りました。また、本能寺の変の際には堺にいた家康は、明智光秀の追っ手から逃れるため「伊賀越え」という決死の逃避行を敢行しています。

豊臣秀吉が天下人となった時代には、家康は関東への国替えを受け入れ、表面上は秀吉に従順な姿勢を見せ続けました。これらの行動は当時から「逃げ」や「忍耐」として捉えられていたのです。

しかし、最終的に関ヶ原の戦いで勝利し、江戸幕府を開いて265年続く政権の礎を築いたことから、「逃げることも時には重要な戦略である」という教訓を込めて、このことわざが生まれたとされています。民衆の間では、家康の人生そのものが処世術の手本として語られるようになったのです。

豆知識

家康が三方ヶ原の戦いで敗走した際、恐怖のあまり馬上で脱糞してしまったという逸話が残っています。後に家康は、この時の自分の情けない姿を絵師に描かせ、生涯手元に置いて戒めにしたと言われています。

家康の「伊賀越え」は、わずか30数名の供回りで険しい山道を3日間かけて逃げ抜いた決死行でした。この時、地元の住民や忍者たちの助けを借りて命を繋いだことが、後の天下統一への重要な転機となったのです。

使用例

  • 今回のプロジェクトは見送りになったけど、逃げ逃げ天下を取る家康の精神で次のチャンスを待とう
  • 転職活動がうまくいかないが、逃げ逃げ天下を取る家康というし、焦らず自分を磨く時期だと思っている

現代的解釈

現代社会では、このことわざの解釈が大きく変化しています。SNSの普及により、何事も即座に結果を求められる風潮が強まり、「逃げ」という行為に対してより厳しい目が向けられるようになりました。特に若い世代では「逃げ」を単純に「負け」と捉える傾向があり、本来のことわざの意味とは異なる理解が広まっています。

しかし、現代のビジネス環境こそ、このことわざの真価が発揮される場面が多いのではないでしょうか。急速な技術革新や市場変化の中で、無理な競争を続けるより、一時的に撤退して新しい戦略を練ることが成功への近道となることがあります。スタートアップ企業の「ピボット」という概念も、まさに家康的な発想の現代版と言えるでしょう。

また、働き方改革の文脈では、無理な残業や過度なストレスから「逃げる」ことが、長期的なキャリア形成において重要だという認識も広まっています。メンタルヘルスの観点からも、適切な撤退は自己防衛の手段として評価されるようになりました。

現代では「戦略的撤退」「タイミングを見極める力」として、このことわざの価値が再評価されているのです。

AIが聞いたら

家康の「逃げ」は、現代ビジネスで最も重要視される「戦略的撤退」と驚くほど一致している。三方ヶ原の戦いで武田信玄に完敗した家康は、プライドを捨てて徹底的に逃げ、浜松城で糞を漏らすほどの屈辱を味わった。しかし、この「失敗」から学んだ教訓が後の天下統一の基盤となった。

現代のスタートアップ企業が実践する「ピボット」戦略も、まさに同じ構造だ。シリコンバレーでは「Fail Fast, Learn Fast」(早く失敗し、早く学べ)が成功の鉄則とされ、Instagram は写真共有アプリになる前に位置情報アプリとして失敗している。Twitter も当初はポッドキャスト配信サービスだった。これらの企業は短期的な「敗北」を受け入れ、方向転換することで最終的な成功を掴んだ。

家康の戦略的思考で特に注目すべきは「待機の美学」だ。関ヶ原の戦いまで約20年間、彼は決定的な勝負を避け続け、情報収集と同盟構築に徹した。現代の投資家が「キャッシュ・イズ・キング」と言うように、家康は「時間と準備こそが最大の武器」と理解していた。

現代のビジネス環境では変化のスピードが加速しているが、「一時的な後退を恐れず、長期的視点で最適解を見つける」という家康の本質的な戦略思考は、むしろ今こそ必要な能力と言えるだろう。

現代人に教えること

このことわざが現代の私たちに教えてくれるのは、「勇気には二つの形がある」ということです。一つは困難に立ち向かう勇気、もう一つは適切なタイミングで身を引く勇気です。

現代社会では、SNSの影響もあって「頑張り続けること」ばかりが美徳とされがちですが、時には立ち止まり、方向転換することも大切な選択肢なのです。あなたが今、何かに行き詰まりを感じているなら、それは新しい道を探すサインかもしれません。

家康のように長期的な視野を持つことで、目先の小さな勝敗に一喜一憂することなく、本当に大切なものを見極められるようになります。転職、人間関係、学習、どんな分野でも「今は準備の時期」と捉えることで、焦りから解放され、より良い判断ができるはずです。

あなたの人生において、今日の「逃げ」が明日の「天下取り」につながることを信じて、自分らしいペースで歩んでいってくださいね。

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