右次左次物言わずの意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

右次左次物言わずの読み方

みぎつぎひだりつぎものいわず

右次左次物言わずの意味

「右次左次物言わず」は、右へ行ったり左へ行ったりと落ち着きなく動き回るのに、何も説明しない人を表すことわざです。行動は活発でよく動くものの、その意図や理由を言葉で伝えないため、周囲からは何を考えているのか分からない人物を指しています。

このことわざが使われるのは、無口で行動の意味が読み取りにくい人を評する場面です。忙しそうに動き回っているけれど、目的を話さない。あちこち行くけれど、何をしているのか説明がない。そんな掴みどころのない人物像を表現しています。

現代でも、職場や学校で「あの人は何を考えているか分からない」と感じる相手がいるでしょう。行動力はあるのに、コミュニケーションが不足しているため、周囲が戸惑ってしまう。このことわざは、そうした行動と言葉のギャップがある人物を的確に言い表しているのです。

由来・語源

このことわざの由来については、明確な文献上の記録は残されていないようですが、言葉の構造から興味深い考察ができます。

「右次左次」という表現は、右へ行ったかと思えば次には左へ、また左へ行ったかと思えば次には右へという、一貫性のない動きを表しています。「次」という字が繰り返されることで、その場その場で方向を変える様子が強調されているのですね。

江戸時代の町人文化の中で、人の行動を観察する言葉として生まれたと考えられています。当時の商人や職人の世界では、人の言動を見極めることが重要でした。口数が少なく、何を考えているのか分からない人物を評する際に、このような表現が使われたのでしょう。

「物言わず」という部分が重要です。右へ左へと動き回りながらも、その理由や意図を説明しない。つまり、行動は活発だが言葉での説明がないため、周囲の人間には意図が読めないという状況を表現しています。

このことわざは、人間観察の鋭さを示す言葉として、口承で伝えられてきたと推測されます。行動と言葉の不一致、あるいは言葉の欠如に着目した、日本人らしい繊細な人物評価の表現といえるでしょう。

使用例

  • 彼は右次左次物言わずで、何を目的に動いているのか誰にも分からない
  • あの新入社員は右次左次物言わずだから、上司も指導に困っているらしい

普遍的知恵

「右次左次物言わず」ということわざは、人間のコミュニケーションの本質について深い洞察を示しています。

人は行動するだけでは、その真意は伝わりません。どんなに活発に動き回っても、言葉による説明がなければ、周囲の人々はあなたの意図を理解できないのです。これは時代を超えた人間関係の真理です。

興味深いのは、このことわざが「無口」だけでなく「右へ左へ」という動きの多さも含んでいる点です。静かにじっとしている人ではなく、むしろ活動的な人物を描いています。つまり、行動力があることと、理解されることは別問題だという教えなのです。

人間は社会的な生き物です。私たちの行動は、他者との関係の中で意味を持ちます。どんなに良い意図があっても、それを言葉で共有しなければ、周囲からは不可解な人物と映ってしまう。先人たちは、この人間関係の難しさを見抜いていました。

このことわざが長く語り継がれてきたのは、行動と言葉の両方が揃って初めて人は理解し合えるという、普遍的な真実を伝えているからでしょう。人間の本質的な孤独と、それを乗り越えるためのコミュニケーションの必要性を、この短い言葉は見事に表現しているのです。

AIが聞いたら

人間の脳には限られた処理能力しかなく、複数の高度な作業を同時に行うと互いに干渉し合います。特に前頭葉という脳の前側の領域では、右手と左手を別々に動かす複雑な協調運動を制御する運動野と、言葉を話すためのブローカ野が隣接しています。つまり、同じ「脳の不動産」を取り合う関係にあるのです。

研究によると、両手で異なる動作を同時に行う課題では、脳の血流が運動制御領域に集中し、言語野への血流が相対的に減少することが分かっています。たとえば、右手で時計回り、左手で反時計回りに円を描くような複雑な両側性運動では、脳は運動の正確性を保つために膨大な計算資源を消費します。この時、言語処理に割ける神経資源が不足し、話すスピードが遅くなったり、言葉が出にくくなったりするのです。

さらに興味深いのは、この抑制が無意識的に起こる点です。脳は自動的に優先順位をつけ、手の動作という身体的な安全に関わる処理を優先します。職人が「物言わず」と表現した状態は、実は脳が効率的にタスクを振り分けた結果だったのです。黙って集中する職人の姿は、神経科学的に最も理にかなった作業形態だったと言えます。

現代人に教えること

このことわざが現代人に教えてくれるのは、行動力だけでは不十分だということです。

私たちは「行動することが大切」と教えられて育ちます。確かにそれは真実ですが、このことわざはもう一歩先を示しています。行動するなら、その意図を言葉で伝えることも同じくらい大切なのです。

現代社会では、チームワークが重視されます。職場でも学校でも、一人で完結する仕事は少なくなっています。あなたがどんなに良い目的で動いていても、それを共有しなければ、周囲の人は協力のしようがありません。むしろ、不信感を抱かれてしまうかもしれません。

特にリモートワークが増えた今、コミュニケーションの重要性は増しています。画面越しでは、あなたの行動はさらに見えにくくなります。意識的に言葉で説明する習慣が、これまで以上に求められているのです。

「自分の考えを言葉にする」これは簡単なようで難しいことです。でも、この小さな努力が、あなたの行動に意味を与え、周囲との信頼関係を築きます。行動と言葉、両方を大切にする人になりましょう。

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