狐之を埋めて狐之を搰くの意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

狐之を埋めて狐之を搰くの読み方

きつねこれをうめてきつねこれをほる

狐之を埋めて狐之を搰くの意味

このことわざは、同じ性質や立場を持つ者同士が互いに助け合う様子、あるいは悪事を共に行う仲間の関係を表しています。狐が獲物を埋め、また狐がそれを掘り返すように、同類の者は互いの行動を理解し、協力し合うという意味です。

特に、表面上は別々の行動に見えても、実は同じ目的や利益のために動いている者同士の関係を指すことが多いでしょう。悪事を働く者たちが、一人が証拠を隠し、もう一人がそれを利用するといった具合に、役割分担しながら協力する様子を批判的に表現する際に使われます。

現代では、不正や悪事に加担する者同士の関係を指摘する文脈で用いられることが多く、「結局は同じ穴の狢だ」という意味合いに近い使い方をされます。同類だからこそ互いの意図を理解し、スムーズに連携できるという人間関係の本質を突いた表現なのです。

由来・語源

このことわざの由来は、中国の古典に見られる狐の習性の観察に基づいていると考えられています。狐は獲物を捕らえると、すぐに食べずに土に埋めて隠す習性があります。そして後日、その埋めた場所を掘り返して食べるのです。

興味深いのは、この行動が狐という同じ種の動物によって行われるという点です。埋めるのも狐、掘り返すのも狐。このことわざは、この自然界の観察から、同じ性質を持つ者同士が協力し合う様子、あるいは同じ穴の狢として悪事を働く様子を表現したものと推測されます。

古来、狐は人を化かす動物として、また狡猾な存在として日本の文化に登場してきました。中国でも同様に、狐は知恵のある動物として様々な故事や寓話に登場します。このことわざが日本に伝わった時期は明確ではありませんが、漢文の素養を持つ知識人の間で使われていたと考えられています。

「埋める」と「搰く(ほる)」という対になる動作が、同類の者による一連の行為を象徴的に示しており、言葉の構造自体が意味を強調する工夫となっています。同じ動物が行う二つの行為という構図が、このことわざの核心的なメッセージを効果的に伝えているのです。

使用例

  • あの二人は狐之を埋めて狐之を搰くで、片方が不正の証拠を隠せば、もう片方がそれを利用して利益を得ている
  • 政治家と業者の癒着は狐之を埋めて狐之を搰くの典型で、互いに便宜を図り合っているだけだ

普遍的知恵

このことわざが語る普遍的な真理は、同じ性質を持つ者同士には独特の連帯が生まれるという人間社会の本質です。善悪を問わず、似た者同士は互いの考えや行動パターンを直感的に理解し、言葉にしなくても協力し合えるのです。

なぜこのような関係が生まれるのでしょうか。それは、同じ価値観や目的を共有する者同士には、説明不要の共通言語が存在するからです。正直者は正直者を信頼し、狡猾な者は狡猾な者と手を組む。この自然な引力は、人類の歴史を通じて変わることがありません。

興味深いのは、このことわざが主に否定的な文脈で使われることです。善良な人々の助け合いよりも、悪事を働く者同士の結託を指すことが多い。これは先人たちが、不正を行う者たちの連携の巧妙さと危険性を見抜いていたからでしょう。一人の悪人は対処できても、組織化された悪は社会に深刻な影響を及ぼします。

このことわざは、表面的には別々に見える行動が、実は一つの目的のために連携していることへの警告でもあります。埋める者と掘る者が別人に見えても、本質的には同じ狐なのです。人間社会の裏側で動く見えない連携を見抜く知恵が、ここには込められています。

AIが聞いたら

宇宇宙では放っておけば物は自然に散らかる方向に進みます。これがエントロピー増大の法則です。コーヒーに入れたミルクは勝手に混ざるけれど、決して分離しない。この物理法則に逆らって、生命だけが秩序を作り出すエネルギーを使います。つまり、何かを埋めて隠すという行為は、宇宙の自然な流れに逆らう高度な営みなのです。

ここで興味深いのは、このことわざが描く「自分で掘り返す」という行動です。物理学的に見れば、秩序を作るのに使ったエネルギーを自ら無駄にする行為。たとえば部屋を片付けるのに1時間かけたのに、すぐ自分で散らかすようなものです。宇宙は放っておいても勝手に無秩序になるのに、わざわざエネルギーを使って秩序化し、さらにエネルギーを使って破壊する。二重のエネルギー浪費です。

人間の心理には「確認したい」「後悔する」という情報処理システムがあります。これは生存に有利だったから進化したはずですが、結果的に物理法則以上の速度で秩序を破壊してしまう。生命は宇宙の法則に逆らって秩序を作れる唯一の存在なのに、心という内部システムがそれを台無しにする。この皮肉な構造こそ、人間という存在の最大の矛盾点かもしれません。

現代人に教えること

このことわざが現代人に教えてくれるのは、人や組織を見る目を養うことの大切さです。表面的な行動だけを見るのではなく、その背後にある繋がりや共通の利害関係を見抜く洞察力が求められています。

特にビジネスや社会生活において、一見別々に動いているように見える人々が、実は同じ目的のために連携していることがあります。不正や不公平な取引を見抜くためには、個々の行動ではなく、全体のパターンを観察する視点が必要です。

同時に、この教訓は自分自身への問いかけでもあります。あなたは誰と手を組んでいますか。その協力関係は、社会に対して誠実なものでしょうか。同類が集まることは自然な現象ですが、その集団が閉鎖的になり、外部への配慮を欠くとき、知らず知らずのうちに「狐之を埋めて狐之を搰く」関係に陥っている可能性があります。

健全な社会を築くためには、透明性と多様性が重要です。似た者同士の心地よさに安住せず、異なる視点を持つ人々との対話を大切にすること。それが、このことわざが現代に投げかける本質的なメッセージなのです。

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