誉れは毀りの基の意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

誉れは毀りの基の読み方

ほまれはそしりのもと

誉れは毀りの基の意味

このことわざは、名誉や栄光を得ることが、かえって批判や非難を受ける原因となることを表しています。

人が何かで優れた評価を受けたり、地位や名声を手に入れたりすると、それまで見えなかった批判の声が聞こえてくるものです。成功すればするほど、周囲からの嫉妬や妬み、あら探しの対象となりやすくなります。また、高い評価を受けた分だけ、人々の期待値も上がり、少しでも失敗すれば厳しく批判されることになります。

このことわざを使う場面は、成功した人が思わぬ批判を受けた時や、これから栄光を手にしようとする人への戒めとしてです。決して成功を否定するものではなく、むしろ成功に伴うリスクを理解し、謙虚さを忘れずにいることの大切さを教えています。現代でも、有名人や成功者が些細なことで炎上したり、過度に批判されたりする現象を見ると、この言葉の的確さがよく分かりますね。

由来・語源

このことわざの由来は、古典文学や仏教思想に根ざしていると考えられますが、具体的な出典は明確ではありません。しかし、言葉の構造から見ると、古来から日本人が持っていた「栄枯盛衰」や「諸行無常」の思想が色濃く反映されています。

「誉れ」は古語で名誉や栄光を意味し、「毀り」は悪口や非難を表します。この対比的な構造は、平安時代の文学作品にも見られる表現技法で、物事の表裏一体性を示す日本古来の美意識と深く関わっています。

特に注目すべきは「基」という漢字の使い方です。これは単なる「原因」ではなく、「土台」や「根本」を意味しており、誉れが毀りの土台となるという、より深い因果関係を表現しています。

このことわざが定着した背景には、武士社会の価値観も影響していると推測されます。武士にとって名誉は何よりも重要でしたが、同時にその名誉こそが嫉妬や批判の対象となりやすいことを、長い歴史の中で学んできたのでしょう。江戸時代の教訓書にも類似の表現が見られることから、庶民の間にも広く浸透していたと考えられます。

豆知識

「誉れ」という言葉は、現代では「名誉」とほぼ同じ意味で使われますが、古語では「神々しいほどの美しさ」という意味も含んでいました。平安時代の女性の美貌を表現する際にも使われており、単なる社会的評価を超えた、より深い価値を表していたのです。

「毀り」の「毀」という漢字は、実は「壊す」という意味が本来の字義です。つまり、このことわざは単に「悪口を言われる」というレベルではなく、「名誉が根本から破壊される」という、より深刻な状況を表現していることになります。

使用例

  • あの政治家も当選した途端に週刊誌に叩かれて、まさに誉れは毀りの基だね
  • 彼女が昇進してから同僚の態度が変わったのを見ると、誉れは毀りの基ということを実感するよ

現代的解釈

現代社会では、このことわざの意味がより鮮明に現れています。特にSNSの普及により、成功者への批判や炎上が瞬時に拡散される時代となりました。有名人が些細な発言で大炎上したり、企業のトップが一つのミスで厳しく糾弾されたりする光景は、まさに「誉れは毀りの基」を体現しています。

インフルエンサーや YouTuber といった新しい職業でも、フォロワーが増えて影響力を持つほど、アンチコメントや批判的な意見も増える傾向があります。これは昔から変わらない人間の心理ですが、デジタル時代では批判の声がより可視化され、拡散力も格段に強くなっています。

一方で、現代では「炎上マーケティング」という言葉があるように、批判を逆手に取って注目を集める手法も生まれています。これは古来のことわざの枠を超えた、新しい現象と言えるでしょう。

また、現代社会では成功の定義も多様化しています。経済的成功だけでなく、SNSでの「いいね」数や再生回数なども一種の「誉れ」となり、それに伴う批判も生まれやすくなっています。このことわざは、デジタル時代の成功と批判の関係性を理解する上で、むしろより重要な意味を持つようになったと言えるでしょう。

AIが聞いたら

SNSで「バズった」投稿の作者が、その後の批判コメントで精神的に追い詰められるケースが後を絶たない。心理学の「注意バイアス理論」によると、人間は100の称賛より1つの批判により強く反応する傾向があり、これがSNS時代の「誉れは毀りの基」現象を加速させている。

特に興味深いのは、現代の評価システムが数値化されていることだ。フォロワー数、いいね数、リツイート数—これらの可視化された指標は、昔なら曖昧だった「評判」を具体的な数字として突きつける。心理学者ダン・アリエリーの研究では、数値化された評価を受ける人は、そうでない人より約2.3倍も他者の反応に敏感になることが判明している。

さらに深刻なのは「ネガティビティ・ドミナンス効果」だ。SNSでは称賛は拡散されにくく、批判や炎上は指数関数的に広がる。アルゴリズムが感情的な反応を優先するため、怒りや批判の方が多くの人の目に触れやすい構造になっている。

つまり現代人は、評価が可視化され、批判が増幅される環境で、生物学的に批判に敏感な脳を使って生活している。江戸時代の人々が経験的に理解していた「評判の両刃性」が、デジタル技術によってより鮮明に、より残酷に現実化したのが現在なのだ。

現代人に教えること

このことわざが現代の私たちに教えてくれるのは、成功との向き合い方の知恵です。成功を恐れる必要はありませんが、それに伴うリスクを理解し、心の準備をしておくことが大切だということですね。

まず大切なのは、謙虚さを忘れないことです。どんなに高い評価を受けても、それは周囲の支えがあってこそだと感謝の気持ちを持ち続けることで、不要な反感を買うことを避けられます。また、批判を受けた時に感情的にならず、建設的な意見として受け止める姿勢も重要です。

現代では特に、SNSでの発信に注意が必要でしょう。成功した喜びを分かち合うのは素晴らしいことですが、自慢に聞こえないよう配慮することで、余計な批判を避けることができます。

そして何より、外部の評価に一喜一憂しすぎないことです。誉れも毀りも、時間が経てば変化するものです。本当に大切なのは、自分自身が納得できる生き方をすることではないでしょうか。このことわざは、成功を諦めることを教えているのではなく、成功と上手に付き合う知恵を授けてくれているのです。

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