日出でて作し、日入りて息うの意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

日出でて作し、日入りて息うの読み方

ひいでてなし、ひいりていこう

日出でて作し、日入りて息うの意味

このことわざは、太陽が昇れば働き始め、太陽が沈めば休むという、自然のリズムに従った生活のあり方を表しています。人間が自分の都合や欲望で生活のペースを決めるのではなく、天の運行という大きな自然の流れに身を委ねて暮らすことの大切さを説いた言葉です。

現代では、規則正しい生活習慣の重要性を説く場面や、自然に寄り添った暮らし方を見直す文脈で使われます。また、無理な夜更かしや不規則な生活を戒める際にも引用されることがあります。人工照明やデジタル機器に囲まれた現代だからこそ、このことわざが示す自然との調和という考え方は、健康的な生活を送るための指針として再評価されているのです。

由来・語源

このことわざは、中国の古典「撃壌歌(げきじょうか)」に由来すると考えられています。撃壌歌は、古代中国の伝説的な聖天子である堯帝の時代に、一人の老人が地面を叩きながら歌ったとされる歌です。その歌詞の中に「日出而作、日入而息」という一節があり、これが日本に伝わって「日出でて作し、日入りて息う」ということわざとして定着したという説が有力です。

堯帝の治世は理想的な政治の象徴とされ、人々が自然のリズムに従って平和に暮らせる時代だったと伝えられています。老人の歌は、為政者の恩恵を意識することなく、ただ太陽の運行に合わせて働き休むという、自然で素朴な生活の喜びを表現したものでした。

日本では、この言葉が農耕社会の理想的な生活態度を示すことわざとして受け入れられました。太陽の光とともに田畑で働き、日が沈めば家に帰って休むという農民の暮らしは、まさにこのことわざが描く世界そのものだったのです。人工的な照明のなかった時代、太陽は人々の生活リズムを決める絶対的な存在でした。このことわざには、自然の摂理に逆らわず生きることの大切さが込められているのです。

豆知識

「作(な)す」という古語は、現代語の「作る」とは少し意味が異なり、「仕事をする」「働く」という意味を持っています。同様に「息(いこ)う」は「休む」という意味の古語です。このことわざでは、わざわざ古い言葉を使うことで、時代を超えた普遍的な生活の知恵であることを印象づけているのです。

人間の体内時計は約24時間周期で、太陽光を浴びることでリセットされることが科学的に証明されています。朝日を浴びると目覚めのホルモンが分泌され、夜暗くなると睡眠を促すホルモンが出る仕組みは、まさにこのことわざが示す生活リズムそのものなのです。

使用例

  • 最近体調がいいのは、日出でて作し日入りて息うという昔ながらの生活に戻したからかもしれない
  • 祖父は90歳を超えても元気だが、日出でて作し日入りて息うを守り続けてきた結果だろう

普遍的知恵

人間は自然の一部であるという根本的な真理が、このことわざには込められています。私たちがどれほど文明を発展させようとも、太陽の光なしには生きられない存在であることに変わりはありません。植物が光合成で生きるように、人間もまた太陽のリズムと切り離せない生命体なのです。

このことわざが何千年も語り継がれてきたのは、人間が自然のリズムから離れようとするたびに、心身の不調という形でそのツケを払わされてきたからでしょう。夜通し働けば体を壊し、昼夜逆転の生活を続ければ心が病む。これは古代中国でも現代日本でも変わらない人間の性質です。

興味深いのは、このことわざが「努力せよ」とも「怠けるな」とも言っていない点です。ただ「太陽とともに生きよ」と語るだけ。そこには、人間の意志や努力を超えた、もっと大きな自然の摂理への畏敬の念があります。自分の力でコントロールできると思い込むことこそが傲慢であり、自然に従うことこそが真の知恵だという、深い人間理解がそこにはあるのです。

現代人が感じる疲労感の多くは、この自然のリズムから外れた生活に起因しているのかもしれません。

AIが聞いたら

人間の脳の視床下部には、わずか2万個ほどの神経細胞からなる視交叉上核という部位があります。ここには時計遺伝子と呼ばれる特殊な遺伝子群があり、約24.2時間の周期で自動的にオン・オフを繰り返しています。興味深いのは、この周期が太陽の自転周期とほぼ一致していることです。つまり、このことわざは人間が意識的に決めた生活習慣ではなく、細胞レベルで組み込まれたプログラムを言葉にしたものなのです。

さらに驚くべきは、この生物時計が全身の細胞に存在することです。肝臓は夜に解毒作業を強化し、腸は朝に消化酵素の分泌を増やします。これらは視交叉上核からの指令で同期しており、光が目に入ることでリセットされます。ところが現代人は夜遅くまで強い光を浴び続けるため、この同期が崩れます。研究では、慢性的な概日リズムの乱れが、インスリン抵抗性を40パーセント上昇させ、うつ病リスクを2倍にすることが分かっています。

特に注目すべきは、交代勤務労働者の研究です。夜勤を続けると、時計遺伝子の発現パターンが通常と逆転し、免疫細胞の活動が低下します。これは単なる疲労ではなく、遺伝子レベルでの機能不全です。このことわざは、数十億年かけて太陽光に適応してきた生命の設計図を、わずか数世代で書き換えることの危険性を、経験的に警告していたのかもしれません。

現代人に教えること

このことわざが現代のあなたに教えてくれるのは、自分の生活リズムを見直す勇気を持つことの大切さです。24時間営業の店、深夜まで光るスマートフォン、いつでも仕事ができる環境。便利さと引き換えに、私たちは自然のリズムから遠ざかってしまいました。

でも、それは本当にあなたが望んだ生活でしょうか。朝日を浴びて目覚め、日中は集中して働き、日が沈んだら心からリラックスする。そんなシンプルな生活こそが、実は最高のパフォーマンスと幸福感をもたらすのかもしれません。

完璧に実践する必要はありません。週に一度でも、休日だけでも構いません。朝早く起きて散歩をしてみる、夜は早めにデジタル機器を手放してみる。小さな一歩から始めてみてください。あなたの体は、きっと自然のリズムを覚えていて、それに応えてくれるはずです。

人間は自然の一部です。その事実を思い出すだけで、日々の疲れやストレスへの向き合い方が変わってくるでしょう。

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