後生願いの六性悪の意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

後生願いの六性悪の読み方

ごしょうねがいのろくしょうあく

後生願いの六性悪の意味

このことわざは、来世での幸せばかりを願って現世での努力を怠る者は、かえって六つの悪い性質に陥ってしまうという戒めを表しています。

後生の安楽を願うこと自体は悪いことではありませんが、それだけに頼って今を疎かにする姿勢が問題なのです。現実の努力を避け、「いつか救われる」と願うだけの人は、目の前の課題から逃げる怠惰な心、楽な道ばかり求める貪欲さ、他人の幸せを妬む心など、様々な悪性を育ててしまいます。

このことわざが使われるのは、理想や願望ばかりを語って実際の行動が伴わない人を戒める場面です。「後生願いの六性悪に陥るな」という形で、口先だけの信心や、努力なしに結果だけを求める態度を批判する際に用いられます。現代でも、目標を語るだけで行動しない人、将来の幸せを夢見るだけで今を大切にしない人への警告として理解できるでしょう。

由来・語源

このことわざの由来については、明確な文献上の記録は限られているようですが、仏教思想の影響を強く受けていると考えられています。

「後生」とは仏教用語で、死後の世界や来世のことを指します。「後生願い」は、来世での幸せや極楽往生を願うことを意味する言葉として、日本の仏教文化の中で広く使われてきました。一方、「六性悪」の「六」という数字は、仏教における「六根」(眼・耳・鼻・舌・身・意)や「六道」(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)など、人間の煩悩や迷いを表す概念としてしばしば用いられてきました。

このことわざが戒めているのは、現世での修行や善行を怠り、ただ来世の安楽だけを願う姿勢です。仏教では本来、日々の実践を通じて心を磨くことが重視されますが、それを怠って口先だけで後生を願う者は、かえって怠惰や貪欲といった悪性に陥ってしまうという逆説を指摘しています。

「六性悪」が具体的にどの六つを指すかについては諸説ありますが、怠惰・貪欲・嫉妬・怒り・愚痴・傲慢といった人間の基本的な煩悩を表していると考えられています。現世での努力を放棄し、来世にのみ希望を託す態度が、かえって人を堕落させるという、実践を重んじる仏教的な教えが込められたことわざと言えるでしょう。

使用例

  • 彼は成功を夢見るばかりで努力しない、まさに後生願いの六性悪だ
  • 後生願いの六性悪に陥らず、今できることを一つずつやっていこう

普遍的知恵

このことわざが語る人間の本質は、実に深いものがあります。人は誰しも、苦しい現実から目を背けたくなる瞬間があるでしょう。そんなとき、「いつか救われる」「将来はきっと良くなる」と願うことで、心の平安を得ようとします。

しかし、先人たちはそこに潜む危険を見抜いていました。未来への希望は人を支える力になる一方で、現在からの逃避にもなりうるのです。今日の努力を避け、明日の幸運だけを待つ心は、知らず知らずのうちに人を怠惰にし、現実と向き合う力を奪っていきます。

さらに興味深いのは、このことわざが「一つの悪」ではなく「六つの悪性」と複数形で語っている点です。一つの逃避が、連鎖的に様々な悪い性質を引き起こすという洞察があります。努力を避ける怠惰は、楽を求める貪欲を生み、それが他者への嫉妬を育て、やがて自己正当化のための怒りや愚痴へと発展していく。人間の心の堕落は、このように段階的に進行するものなのです。

このことわざが長く語り継がれてきたのは、人間が本質的に「今ここ」から逃げたがる存在だからでしょう。理想を語ることは簡単ですが、地道な実践は困難です。だからこそ、この戒めは時代を超えて響き続けるのです。

AIが聞いたら

人間の脳は、1年後の100万円よりも今日の10万円を選んでしまう傾向があります。これを行動経済学では「双曲割引」と呼びます。面白いのは、この割引率が時間によって一定ではないことです。たとえば「1年後の100万円」と「1年1日後の110万円」なら後者を選べるのに、「今日の100万円」と「明日の110万円」だと今日を選んでしまう。つまり、遠い未来の選択肢同士を比べるときは冷静なのに、目の前に利益がぶら下がると突然せっかちになるのです。

このことわざが驚くべきなのは、この非対称性を「後生」と「六性」という対比で完璧に捉えている点です。死後の救いという究極的に遠い利益は、数学的にはほぼゼロまで価値が割り引かれます。一方、目の前の欲望は本来の価値の何倍にも膨れ上がって見える。研究によれば、人は1か月後の報酬を約半分の価値にまで割り引くとされています。これが数年、数十年先となれば、主観的価値は限りなくゼロに近づきます。

つまり「後生を願いながら六性に負ける」のは意志の弱さではなく、人間の時間認知システムに組み込まれた構造的なバグなのです。このことわざは、脳科学も行動経済学もない時代に、人間の意思決定メカニズムの本質を見抜いていたことになります。

現代人に教えること

このことわざが現代のあなたに教えてくれるのは、夢と現実のバランスの大切さです。

私たちは日々、様々な目標や理想を抱いています。健康になりたい、成功したい、幸せになりたい。そうした願いを持つことは素晴らしいことです。でも、そこで立ち止まってしまっては意味がありません。大切なのは、その理想に向かって、今日できる小さな一歩を踏み出すことなのです。

現代社会では、SNSで他人の成功を見て焦ったり、自己啓発本で理想の人生を夢見たりする機会が増えています。しかし、理想を語るだけで満足してしまい、実際の行動が伴わなければ、このことわざが警告する「六性悪」に陥る危険があります。

あなたにできることは、遠い目標を持ちながらも、今日この瞬間にできることに集中することです。完璧を目指さなくてもいい。小さな努力でいいのです。毎日少しずつ前進する姿勢こそが、あなたを本当の意味で成長させ、結果として望む未来へと導いてくれるでしょう。

未来を夢見ることと、今を生きることは、対立するものではありません。両方を大切にすることで、あなたの人生はより豊かなものになっていくはずです。

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