過ちて改めざる是を過ちと謂うの意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

過ちて改めざる是を過ちと謂うの読み方

あやまちてあらためざるこれをあやまちというう

過ちて改めざる是を過ちと謂うの意味

このことわざは、間違いを犯しても改めないことが真の過ちであるという意味です。人間である以上、誰もが間違いを犯すものです。それ自体は仕方のないことであり、責められるべきことではありません。しかし、その間違いに気づきながら、あるいは指摘されながらも、それを認めず、反省せず、同じ過ちを繰り返し続けることこそが、本当の意味での過ちだと教えています。

このことわざは、自分の非を認めようとしない人や、何度も同じ失敗を繰り返す人に対して使われます。また、自分自身を戒める言葉としても用いられます。現代社会でも、失敗したときに言い訳ばかりする人、責任転嫁する人、同じミスを繰り返す人に対して、この言葉の重みは変わりません。大切なのは失敗しないことではなく、失敗から学び、成長する姿勢なのだということを、このことわざは私たちに教えてくれるのです。

由来・語源

このことわざは、中国の古典『論語』の「衛霊公第十五」に由来すると考えられています。孔子の言葉として「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」と記されており、日本には古くから儒教思想とともに伝わってきました。

孔子が生きた春秋時代は、戦乱が続き、多くの為政者が誤った判断を繰り返していた時代でした。そうした中で孔子は、人間が間違いを犯すこと自体は避けられないものとして受け入れていました。むしろ彼が問題視したのは、間違いを認めず、改めようとしない態度だったのです。

「過ち」という言葉には、単なるミスという意味だけでなく、道徳的な誤りという深い意味が込められています。また「改めざる」の「ざる」は打消しの助動詞で、改めないという強い意志や態度を示しています。そして「是を過ちと謂う」という表現は、「これこそが本当の過ちである」という強調の意味を持っています。

つまりこのことわざは、単に間違いを指摘するのではなく、人間の成長と道徳的な向上を願う孔子の深い思想が込められた言葉なのです。日本でも江戸時代の寺子屋教育などで広く教えられ、人格形成の基本的な教えとして定着していきました。

使用例

  • 彼は何度注意されても遅刻を繰り返している、まさに過ちて改めざる是を過ちと謂うだね
  • ミスをしたこと自体より、それを認めない態度が問題だ、過ちて改めざる是を過ちと謂うというからね

普遍的知恵

このことわざが何千年も語り継がれてきた理由は、人間の最も根本的な弱さと向き合っているからです。人は誰でも間違いを犯します。それは避けられない事実です。しかし、もっと避けられないのは、自分の間違いを認めたくないという心理なのです。

なぜ人は過ちを認められないのでしょうか。それは自尊心が傷つくからです。間違いを認めることは、自分の無知や未熟さを認めることであり、それは心理的に大きな痛みを伴います。特にプライドが高い人ほど、自分の非を認めることに強い抵抗を感じます。また、間違いを認めれば責任を取らなければならないという恐れもあります。だから人は言い訳をし、責任を転嫁し、同じ過ちを繰り返してしまうのです。

しかし先人たちは、そこに人間の成長を妨げる最大の障害があることを見抜いていました。間違いそのものは学びの機会です。むしろ間違いを通してこそ、人は深く学び、成長できます。ところが、間違いを認めず改めなければ、その貴重な学びの機会は失われ、人は同じところで足踏みを続けることになります。

このことわざは、完璧であることを求めているのではありません。むしろ不完全な存在である人間が、どうすれば成長し続けられるかという、深い人間理解に基づいた知恵なのです。

AIが聞いたら

宇宙には「放っておくと物事は必ず乱れていく」という絶対法則があります。これが熱力学第二法則、エントロピー増大の法則です。コップが割れても自然には元に戻らない。部屋は掃除しなければ散らかる一方。これらは偶然ではなく、宇宙の必然なのです。

ここで驚くべき発見があります。過ちを放置することは、まさにこの物理法則に従っているということです。たとえば人間関係で小さな誤解が生じたとします。謝らずに放置すると、その誤解は自然に解消されるでしょうか。答えはノーです。むしろ時間とともに疑念が膨らみ、新たな誤解を呼び、関係性という「秩序あるシステム」はどんどん崩壊していきます。これは感情の問題ではなく、システムのエントロピーが増大しているのです。

物理学者の計算によれば、散らばった状態の方が圧倒的に「場合の数」が多いのです。整理された部屋は一通りしかありませんが、散らかり方は無数にあります。だから自然は必ず乱雑な方向へ進む。過ちも同じです。放置すれば影響は広がり、複雑化し、収拾がつかなくなります。

「改める」とは、エネルギーを投入して秩序を回復させる行為です。掃除機をかけるように、謝罪という仕事をして関係を元に戻す。これをしない限り、宇宙の法則として状況は悪化し続けます。倫理が物理法則と一致しているのです。

現代人に教えること

このことわざが現代のあなたに教えてくれるのは、失敗を恐れるのではなく、失敗から学ばないことを恐れるべきだということです。完璧主義に陥り、間違いを犯すことを極度に恐れる人が増えています。しかし本当に避けるべきは、間違いそのものではなく、間違いを認めず、そこから何も学ばない態度なのです。

職場でミスをしたとき、素直に認めて改善策を考える人は信頼されます。一方で言い訳ばかりする人は、たとえ能力が高くても信頼を失います。人間関係でも同じです。謝るべきときに謝れる人、自分の非を認められる人のもとには、人が集まってきます。

大切なのは、間違いを成長の糧に変える習慣を身につけることです。失敗したら、まず事実を認める。次になぜそうなったのかを冷静に分析する。そして同じ間違いを繰り返さないための具体的な対策を立てる。このサイクルを回せる人こそが、継続的に成長していける人なのです。

あなたの価値は、間違いを犯さないことではなく、間違いから学び続けることで決まります。そう考えれば、失敗はもう怖くないはずです。

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