七珍万宝の随一は人の命と人の誠の意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

七珍万宝の随一は人の命と人の誠の読み方

しちちんまんぽうのずいいちはひとのいのちとひとのまこと

七珍万宝の随一は人の命と人の誠の意味

このことわざは、どんなに貴重な宝物よりも、人の命と誠実な心こそが最も尊いものだという教えを伝えています。世の中には金銀財宝や地位、名誉など、人々が価値あるものとして追い求めるものがたくさんあります。しかし、それらすべてを集めたとしても、人の命の重さや、嘘偽りのない誠実な心には及ばないのだと説いているのです。

この表現は、物質的な豊かさを追求するあまり、本当に大切なものを見失いそうになったとき、あるいは利益のために誠実さを曲げようとする誘惑に直面したときに使われます。また、人の命を軽んじるような行為や考え方を戒める場面でも用いられるでしょう。現代社会においても、経済的成功や物質的な豊かさが重視される中で、人間としての根本的な価値は何かを問い直す言葉として、深い意味を持ち続けています。

由来・語源

このことわざの明確な出典については、はっきりとした記録が残されていないようですが、言葉の構成から興味深い背景が見えてきます。

「七珍万宝」という表現は、仏教用語や中国の古典に見られる「七宝」という概念と関連していると考えられています。七宝とは金、銀、瑠璃、玻璃、硨磲、珊瑚、瑪瑙といった貴重な宝物を指し、仏教では極楽浄土を飾るものとされてきました。「七珍万宝」はこれをさらに拡大した表現で、数え切れないほどの宝物すべてを意味していると推測されます。

「随一」という言葉は、多くのものの中で最も優れたもの、第一のものという意味です。つまりこのことわざは、あらゆる宝物の中で最高のものは何かという問いかけの形をとっているのです。

そして答えとして示されるのが「人の命と人の誠」です。ここでの「誠」は、誠実さ、真心、嘘偽りのない心を指しています。物質的な豊かさが重視される一方で、精神的な価値を説く仏教思想や儒教思想の影響を受けながら、日本で育まれてきた教えではないかと考えられます。江戸時代の道徳教育の中で、商人や武士の心得として語り継がれてきた可能性も指摘されています。

豆知識

このことわざに登場する「誠」という概念は、江戸時代の商人道において特に重要視されました。近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)の精神や、大阪商人の「始末」「才覚」「算用」と並ぶ「信用」の重視は、まさにこの「誠」の実践だったと言えます。商売において一時的な利益よりも長期的な信頼関係を築くことが、結果的に最大の財産になるという考え方です。

「七珍万宝」という表現の「七」は、必ずしも正確に七つという数を示すのではなく、多数を表す象徴的な数字として使われています。日本語には「七転び八起き」「七つの海」など、七を用いた表現が多く見られますが、これは完全性や多様性を示す数として古くから好まれてきたためです。

使用例

  • どれだけお金を稼いでも、七珍万宝の随一は人の命と人の誠だから、不正な手段には手を染めたくない
  • 会社の利益も大事だけど、七珍万宝の随一は人の命と人の誠というように、従業員の安全と誠実な経営を何より優先すべきだ

普遍的知恵

人類の歴史を振り返ると、あらゆる時代、あらゆる文明において、人々は富や権力を追い求めてきました。しかし同時に、どの時代にも「本当に大切なものは何か」という問いが繰り返されてきたのです。このことわざが語り継がれてきた理由は、まさにここにあります。

人間には、目に見える価値あるものに心を奪われやすい性質があります。輝く宝石、積み上がる金貨、立派な屋敷。これらは確かに魅力的で、手に入れれば満足感を得られるでしょう。けれども、そうした物質的な豊かさだけでは、人は真の充足感を得られないことを、先人たちは経験から学んできました。

なぜなら、命は一度失えば二度と戻らず、どんな財宝とも交換できないからです。そして誠実さという心の在り方は、人と人との間に信頼という目に見えない絆を生み出します。この絆こそが、孤独な存在である人間が社会の中で生きていくための、最も確かな支えとなるのです。

このことわざは、物質的価値と精神的価値のバランスを問いかけています。豊かさを求めることは決して悪いことではありません。しかし、その過程で命を軽んじたり、誠実さを失ったりすれば、得たものよりも失うものの方がはるかに大きいという真理を、人類は何度も痛感してきたのです。

AIが聞いたら

ネットワーク科学では、個々のノードの性能よりも「つながり方」が全体の価値を決めます。たとえば、スーパーコンピュータを1台だけ持っていても、インターネットから切り離されていたら価値は限定的です。一方で、普通のスマホでも信頼できるネットワークにつながっていれば、世界中の情報や人にアクセスできます。

このことわざが面白いのは、人の命を「ノード」、誠を「信頼プロトコル」として見たときの価値の非対称性です。どんな宝も単体では孤立した高性能ノードに過ぎません。価値100の宝を7つ集めても、合計は700のままです。しかし誠実な人間は違います。ネットワーク理論のメトカーフの法則によれば、ネットワークの価値はノード数の2乗に比例します。つまり、信頼でつながった10人のネットワークは100の価値を、100人なら10000の価値を生み出すのです。

さらに重要なのは、誠実さという信頼プロトコルを持つ人は「ハブノード」になりやすいという点です。バラバシのスケールフリーネットワーク研究では、信頼性の高いノードには新しいリンクが優先的に集まり、ネットワーク全体の情報流通の大部分がそこを経由します。つまり、誠実な一人の人間が、物理的な宝の総和を遥かに超える価値を生み出せる構造的理由がここにあるのです。

現代人に教えること

現代を生きる私たちは、かつてないほど物質的に豊かな時代に暮らしています。しかし同時に、その豊かさを追求する過程で、大切なものを見失いやすい時代でもあるのです。このことわざは、あなたに立ち止まって考える機会を与えてくれます。

仕事で成果を上げることは素晴らしいことです。でも、そのために自分や他人の健康を犠牲にしていないでしょうか。効率や利益を追求することは大切ですが、そのために誠実さを曲げていないでしょうか。

このことわざが教えてくれるのは、人生の優先順位です。まず何よりも、自分と周りの人の命と健康を大切にすること。そして、どんな状況でも誠実であり続けること。この二つを守っていれば、たとえ一時的に損をしたように見えても、長い目で見れば必ず報われます。

あなたが今日、小さな嘘をつく誘惑に駆られたとき、誰かの安全よりも効率を優先しそうになったとき、この言葉を思い出してください。本当の宝物は、あなたの心の中にあるのですから。

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