驥尾に付すの意味・由来・使い方|日本のことわざ解説

ことわざ

驥尾に付すの読み方

きびにふす

驥尾に付すの意味

「驥尾に付す」とは、優れた人物に従って行動することで、自分も良い結果を得ることができるという意味です。

名馬の尻尾につかまって進むように、実力のある人や成功している人のそばにいることで、自分一人では到達できない高い地位や成果を手に入れることができるのです。この表現には、自分の力だけでは限界があることを認めつつ、賢明な選択によって目標を達成するという前向きな意味が込められています。

使用場面としては、転職や進学で優秀な人がいる環境を選ぶとき、ビジネスで成功している人の下で働くとき、学習で優れた指導者に師事するときなどが挙げられます。単なる依存ではなく、戦略的な判断として優秀な人との関係を築くことの価値を表現しているのです。現代でも、メンターを見つけることや、成長できる環境に身を置くことの重要性として理解されており、自己啓発やキャリア形成の文脈でよく使われています。

由来・語源

「驥尾に付す」の由来は、中国の古典『史記』にある「驥尾に付して千里を致す」という表現から来ています。驥(き)とは一日に千里を駆ける名馬のことで、この優れた馬の尻尾につかまって進めば、普通では到達できない遠い距離まで行くことができるという意味でした。

この故事は、もともと中国の戦国時代の思想を表現したものです。当時の知識人たちは、優秀な人物に従うことで自分も高い地位や成果を得られると考えていました。『史記』では、賢者や権力者に従うことの重要性を説く文脈で使われていたのです。

日本には平安時代頃に漢文として伝わり、その後日本のことわざとして定着しました。江戸時代の文献にも見られることから、かなり古くから日本人に親しまれてきた表現だと考えられます。興味深いのは、中国では実用的な処世術として語られていたこの言葉が、日本では少し異なる文脈で理解されるようになったことです。日本人特有の謙虚さや、集団の中での立ち回りを重視する文化と結びついて、独自の解釈が生まれていったのでしょうね。

豆知識

驥(き)という漢字は、実は「馬」偏に「冀」と書く非常に複雑な文字で、現代ではほとんど使われなくなった漢字の一つです。この文字だけで「優秀な馬」「名馬」を意味し、古代中国では最高級の馬を表す特別な文字として大切に使われていました。

興味深いことに、一日千里を走る馬というのは、現代の感覚で計算すると時速約200キロメートルで走り続けることになります。これは明らかに現実的ではない速度ですが、古代の人々にとって「到達不可能なほど優秀」という理想を表現するための比喩だったのでしょうね。

使用例

  • あの会社の優秀な部長の下で働けることになったから、驥尾に付して成長したいと思っている
  • 業界トップの先輩と一緒にプロジェクトを進められるなんて、まさに驥尾に付すチャンスだ

現代的解釈

現代社会では「驥尾に付す」の概念がより複雑で多様な意味を持つようになっています。SNSやインターネットの普及により、優秀な人物との接点を持つ方法が劇的に変化したからです。

従来は物理的に近くにいることが前提でしたが、今ではオンラインで著名人をフォローしたり、ウェビナーに参加したり、オンラインサロンに入会したりすることで「驥尾に付す」ことが可能になりました。YouTubeやポッドキャストを通じて優秀な人の思考プロセスを学ぶことも、現代版の「驥尾に付す」と言えるでしょう。

一方で、情報過多の時代だからこそ、誰の「尻尾」につくかの選択がより重要になっています。インフルエンサーや自称専門家が溢れる中で、本当に価値のある人物を見極める目が求められているのです。

また、終身雇用制度の崩壊により、一人の上司や会社に依存するリスクも高まりました。現代では複数の優秀な人物から学ぶ「マルチメンター」の考え方が主流になりつつあります。一つの「驥尾」ではなく、様々な分野の専門家から学び取る柔軟性が重要視されているのです。

さらに、個人の価値観や働き方の多様化により、何をもって「優秀」とするかの基準も変化しています。収入や地位だけでなく、ワークライフバランスや社会貢献度なども含めた総合的な判断が求められる時代になったのです。

AIが聞いたら

SNSで「いいね」を押す瞬間、私たちは無意識に「驥尾に付す」を実践している。フォロワー数百万人のインフルエンサーが投稿すると、瞬時に数万の「いいね」が集まる現象は、まさに名馬の尻尾につかまって名声を得ようとする古代の知恵そのものだ。

興味深いのは、SNSアルゴリズムが「驥尾に付す」行動を加速させていることだ。プラットフォームは影響力の大きなアカウントの投稿を優先表示し、フォロワーはその投稿に反応することで自分の存在感を示そうとする。つまり、システム自体が「名馬についていく」構造を作り出している。

さらに驚くべきは、この行動パターンが現代で極限まで効率化されていることだ。古代なら物理的に馬車について行く必要があったが、今はワンタップで瞬時に「付く」ことができる。リツイートやシェア機能は、影響力のある人の発言を自分のネットワークに広める現代版「驥尾に付す」といえる。

ただし、SNS時代の「驥尾に付す」には新たなリスクも生まれた。炎上や誤情報の拡散に巻き込まれる危険性だ。古代の人々が慎重に「付く相手」を選んだように、現代でも誰をフォローし、何をシェアするかの判断力がより重要になっている。

現代人に教えること

「驥尾に付す」が現代人に教えてくれるのは、成長への謙虚なアプローチの大切さです。自分一人の力だけで全てを成し遂げようとするのではなく、優れた人から学ぶ機会を積極的に求める姿勢が重要なのです。

現代社会では、メンターシップやコーチングが注目されているように、誰かから学ぶことの価値が再認識されています。あなたも、職場で尊敬できる先輩を見つけたり、興味のある分野の専門家をフォローしたりすることから始めてみてはいかがでしょうか。

大切なのは、学ぶ相手を慎重に選ぶことです。単に有名だからという理由ではなく、あなたの価値観や目標に合った人物を見つけることが成功の鍵となります。そして、受け身でいるのではなく、積極的に質問し、実践し、自分なりに消化していく姿勢も欠かせません。

このことわざは、依存することを勧めているのではありません。むしろ、賢明な選択によって自分の可能性を最大限に引き出すことの重要性を教えてくれているのです。優秀な人の近くにいることで得られる学びや刺激を、あなた自身の成長の糧として活かしていけば、きっと想像以上の成果を手にすることができるでしょう。

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